心臓に酸素や栄養分を供給する動脈は冠動脈と呼ばれます。動脈硬化により、その通り道が狭くなった場合、歩く、走るなどの労作により、より多くの酸素や栄養分が必要となり、いわゆる需要と供給のバランスが崩れた状態を生じ、狭心症発作が出現します。これが労作性狭心症といわれるものであり、その主なものは安定型の狭心症に分類されます。一方、そのまま放置した場合、急性心筋梗塞に移行する可能性がある狭心症は、不安定型の狭心症と呼ばれます。
次に急性心筋梗塞とは、血栓と呼ばれる血の塊により、冠動脈の血流が急激に絶たれる病態です。そのため急激に心筋が壊死に陥り、突然死につながる危険な不整脈が出現するなど、非常に重篤な病態となります。
そういった狭心症・心筋梗塞が疑われた場合、最終的には冠動脈造影検査を施行致します。冠動脈造影検査とは、冠動脈の入り口にカテーテル(ビニール状の細長いチューブ)を挿入し、そこから造影剤を注入し、冠動脈の狭窄や閉塞の有無を直接肉眼的に確認するものです。
冠動脈に厳しい狭窄病変(有意狭窄病変)や閉塞病変が認められた場合、その治療として経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行します。PCIとは上記病変に対し、先端のやわらかいガイドワイヤーと呼ばれる針金を通過させ、病変部位でバルーン(細長い風船状のもの)を拡張させ、病変の狭窄を解除する治療方法です。
しかしこの手技では3ヶ月後に再び病変部の狭窄(再狭窄)が4割程の割合で生じてしまいます。そこで、その後ステント(主としてステンレス製の金網)をバルーンに乗せておき、バルーンの拡張と一緒に金網も拡張させ、血管の内側を金網で支える方法が用いられるようになりました。
ステントの使用により再狭窄も約2割に軽減しました。さらに2年程前からは、このステントに薬剤をのせて再狭窄の頻度をよりいっそう低下させる目的で、薬剤溶出性ステントが使用されるようになりました。狭心症・心筋梗塞症例のうち冠動脈バイパス術が望ましいような厳しい病変を除いて、多くの病変はこれらステントの使用により治療が可能となりました。
当院の循環器科では、さまざまな循環器疾患に関して対応させていただいておりますが、特に虚血性心疾患の診療に力を注いでおります。胸痛、胸部圧迫感など虚血性心疾患を疑わせる様な症状をお持ちの方は受診をおすすめします。
『すこやか』2006年11月号に掲載 |