外科

乳腺

乳腺疾患について

乳腺疾患には、悪性疾患の乳がんをはじめに乳腺症、乳腺線維線腫症、乳管内乳頭腫、乳腺炎などの良性疾患があります。


乳がんについて

日本人女性の全がん罹患率のなかで乳がんは1位となっており、最新の統計では日本人女性の約9人に1人が乳がんに罹患するといわれています。40~50代を中心とした比較的若い女性に多く、日本では死亡率、罹患率ともまだ年々増加しています。しかしながら未だに乳がん予防法は解明されておらず、早期発見、早期診断、早期治療が重要となっています。

ブレスト・アウェアネス
自分の乳房の状態に日頃から関心を持ち、乳房を意識して生活することを「ブレスト・アウェアネス」といい、これは乳がんの早期発見・診断・治療につながる、女性にとって非常に重要な生活習慣です。以下の4つの項目の実践が大切です。
① 自分の乳房の状態を知るために、日頃から自分の乳房を、見て、触って、感じる
  (乳房のセルフチェック)
② 気をつけなければいけない乳房の変化を知る
  (しこり、血性の乳頭分泌、乳頭乳輪部のただれ、皮膚陥凹など)
③ 上記②の乳房の変化を自覚したら、なるべく早く医療機関を受診する
④ 40歳になったら定期的に乳がん検診を受ける


乳腺外来では

 1.   乳がん検診で異常を指摘されて要精査となった方の2次検診

 2.   自己検診でしこりを触れた方や異常を感じた方の精密検査

 3.   人間ドックで異常を指摘された方の精密検査

    などを行っています。


乳腺診療の基本は視触診とマンモグラフィー(MMG),乳房超音波検査(US)
です。MMGは乳房のレントゲン検査で腫瘤と石灰化からがんをみつける優れた検査です。残念ながら欠点もあり、乳腺組織が多い高濃度乳腺(デンスブレスト)の方はがんが見つかりにくく、MMG検査のみで異常なしと診断するのは難しいことがあります。腫瘤があればそのほとんどをUSで映し出すことができ、大きさや形、硬さや周囲との境界面の様子などから診断します。当科ではMMGとUS検査をあわせて診断するようにしています。画像検査で発見された病変はUSガイド下に細い針を差し込んで細胞を取り出す穿刺吸引細胞診や太めの針を差し込んで腫瘍の一部を取り出す針生検を行い、組織学的な診断を行います。その他、必要に応じて乳腺MRI検査やCT検査、骨シンチグラフィー検査などを組み合わせ、正確かつ迅速な診断を心がけています。

乳がんの治療について
乳がんの治療は手術療法、薬物療法、放射線療法の3本柱が治療の基本とされています。

手術療法では、根治性と美容性の両立が重要であり、当科では乳房温存手術およびセンチネルリンパ節生検を積極的に行っております。しかしながら術中迅速病理検査でリンパ節に悪性細胞が認められた場合には速やかに腋窩リンパ節郭清を追加し、断端が陽性の場合には追加切除または全摘に移行します。

薬物療法には抗がん剤療法、分子標的治療、免疫チェックポイント阻害薬、ホルモン剤治療など、病状に応じて日本乳癌学会のガイドラインに基づき外来で行っております。

乳がんは、がん細胞の性質によって、薬の反応性や増殖する力の強さなどが異なります。乳がん細胞を、性質を示す指標(ホルモン感受性・HER2過剰発現・がん細胞の増殖能力:Ki-67)によって5種類に分類したのがサブタイプ分類です。薬物療法は、サブタイプに応じて適切な治療が選択されます。

 

ルミナル型:
女性ホルモンに対する受容体(エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体)をもつ「女性ホルモン受容体陽性乳がん」の大部分と一致する乳がんのこと

HER2陽性:
がんの増殖に重要な役割を果たしているHER2受容体が過剰に発現しているタイプの乳がんのこと

トリプルネガティブ:
2つの女性ホルモン受容体(エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体)とHER2受容体を発現していない乳がんのこと

放射線治療は手術の後に再発予防目的で行われる場合があります。放射線治療につきましては東海大など近隣医療機関と連携しています。

遺伝子検査につきましては女性ホルモン陽性乳がんの再発リスクを調べるオンコタイプDX検査や遺伝性乳がんの原因遺伝子BRCA1/2の検査も当院で行うことができます。ただし検査には条件がありますので外来でご相談ください。

 

水曜外来に東海大学乳腺外科の新倉教授、火曜外来には女性医師の横山梢先生に来ていただき、東海大学とも連携して診療を行っています。
また当院に長年勤められ鶴巻に開業された飯尾先生にも木曜に診療していただいています。


<外来診察>
月曜日午前・午後  柏木浩暢
火曜日午前     横山梢
水曜日午前        新倉直樹
木曜日午前        飯尾宏
金曜日午前     柏木浩暢